こんにちは。作品選定班の藤原です。
今回はCLARK THEATER 2012の長編プログラムの一つである『8 1/2』について紹介します。
監督はフェデリコ・フェリーニ。他の代表作には『道』『カビリアの夜』などがあります。
特に前者は観たことのある人も多いのでは。イタリアを代表する映画監督です。
さて、本作品の主人公はマルチェロ・マストロヤンニ演じる映画監督グイド。新作の構想に行き詰まった彼の苦悩と混乱を 描きながらストーリーは進んでいきます。
所謂「難解な作品」と言われることの多い 映画であり、確かに現実と夢、過去がその境界を曖昧にして入り乱れる構成は混沌にして複雑で無理にストーリーを追おうとすると混 乱するかもしれません。しかし次から次へと紡ぎ出される独特の映像世界は大変蠱惑的で、目くるめく思いがします。
そもそもこの映画にはある種の楽天的な雰 囲気が漂っており、小難しくて取っ付きにくいような感覚を覚えることもありません。むしろサーカスのような映画だと感じます。
しからば無理にストーリーを理解しようとせずにいっそその混沌に身を投げ出してしまうのもこの作品の楽しみ方の一つのような気が します。心地良いですよ。
ところでこの作品はフェリーニの自伝的要素が色濃く表出しています。
映画製作が上手くいかなかったり、女性関係に悩まされる主人公の状況はフェリーニ自身の心象の投影とも言え、そんな自分の心の内をありのままに表現してしまった本作。
「私は映画だ」とは彼の著作のタイトルですが、ある意味その通りの作品であるとも言えます。
そして、本作をただ訳の分からないだけの自己満足として終わらせずに心躍るような映像美で彩り、名作へと昇華させたのは”映像の魔術師”とも言われるフェリーニの非凡さ故ではないでしょうか。
また、 ニーノ・ロータ作曲の映像の雰囲気と絶妙に合致した劇伴、とめどなく溢れるセリフ、マストロヤンニやクラウディア・カルディナー レ、アヌーク・エーメなどの魅力的な出演者等々、本作の魅力は映像のみにとどまりません。
上映は10月25日(木)13:00~、10月26日(金)9:30~の2回です。
映画史に残る名作と誉れ高いにも関わらず、権利関係により日本では数年前までリバイバル上映もDVDもない状態だった本作を、この機会に是非。